GID性同一性障害(トランスジェンダー等を含む)を巡る動きは、主に診断基準の策定と運用に主眼が置かれてきた歴史がある。
その一方で、臨床における実際のホルモン治療の実践に関し、性同一性障害に関する診断と治療のガイドラインは、「MTFの場合,エストロゲン製剤やゲスタゲン製剤の投与を行う。FTM では,アンドロゲン製剤の投与を行う。」と定めるのみであるので、GID性同一性障害(トランスジェンダー等を含む)のホルモン療法(特に臨床におけるホルモン剤・ホルモン注射によるホルモン治療)の臨床医は、具体的にどのようなケースでどのような製剤製品を使うべきかの基準がなく、実際のホルモン治療に消極的とならざるを得ない現状がある。このように、GID性同一性障害(トランスジェンダー等を含む)のホルモン療法(特に臨床におけるホルモン剤・ホルモン注射によるホルモン治療)の現場が実際の治療に消極的でありつづけることは、ひいてはGID性同一性障害(トランスジェンダー等を含む)の当事者にとっても不利益であるといえる。
そこで、本会では、GID性同一性障害(トランスジェンダー等を含む)の当事者の多様なニーズに応えうる有効かつ医学的に安全で適切なGID性同一性障害(トランスジェンダー等を含む)のホルモン療法(特に臨床におけるホルモン剤・ホルモン注射によるホルモン治療)のガイドラインを策定する必要性があると判断し、「GID性同一性障害(トランスジェンダー等を含む)にかかるホルモン療法(特に臨床におけるホルモン剤・ホルモン注射によるホルモン治療)の実施基準ガイドライン」を策定するに至った。
また、ガイドラインは策定するだけでは意味がないため、その内容を周知する教育研修プログラムを整備した。そして、このようなガイドラインに精通した医師としかるべき体制を有する医療機関を認定する認定医制度と認定医療機関制度も創設された。
LGBT等の用語が注目され、性自認への関心の高まりを反映して性同一性障害の診断とホルモン療法(特に臨床におけるホルモン剤・ホルモン注射によるホルモン治療)の需要が増すにつれ、本会の役割は情報交換・情報提供・情報発信の器としての役割から、新たな社会的責任を負う立場になった。このような認定医制度と認定医療機関制度の創設は、ホルモン療法(特に臨床におけるホルモン剤・ホルモン注射によるホルモン治療)を望む患者が自身が望むホルモン治療を受けることができる医師と医療機関を選ぶ指標となり、GID性同一性障害(トランスジェンダー等を含む)を巡る社会の変化に対応するための方策の1つとなりえるものである。
